『 恋人たちの惑星 ( ほし ) 』
ふぁ ・・・・ 思わず漏れた熱い吐息が 冷たい空気の中に消えてゆく。
「 あ は ・・・ あれれ ・・・ あっと言う間に ・・・ ? 」
ジョーはぼう・・・っと宙に目をやりつつ、空気の動きを感じていた。
「 ・・・ 冷えてきた ・・・ のか ? わからない ・・・
ただ ぼくの身体の中はまだ熱さが篭っているってことさ ・・ 」
彼は物憂げに寝返りをうち 傍らの彼女の寝顔をそっとみやった。
「 ・・・ うふ ・・・ ぼくの ぼくだけのひと。 ・・・ ふふふ あいしてる♪ 」
― ちゅ。 ほんの少し開いている唇にそっと口付けした。
「 ・・・ う ・・・ ? え なあに ・・・? 」
カサリ ― リネンをずらし、 フランソワーズも身体の向きをかえた。
白い肢体に その肩やら首に亜麻色の金糸がはらはらと纏わりついている。
「 ・・・ なんでもないよ ・・・ まだ夜中だ、 寝ようよ ・・・ 」
「 え? ・・・ ええ ・・・ あら ・・・・少し冷えてきた? 」
「 あ ああ。 今夜は強い冷え込み、だって。 ここは暖かいけど ・・・
ほら ・・・ まだこんなに火照っている ・・・ 」
彼は すい・・・っと傍らの白い肢体に唇を這わせた。
「 ・・・ きゃ ・・・ う〜〜〜ん ・・・ や ァ だ ァ 〜 」
「 うふふ ・・・ ね? ステキだった! すごく〜〜 」
「 ・・・ ヤダ そんなこと ・・・ 」
「 ねえ 顔 みせて? 」
「 ・・・ や ・・・ まだ イヤ ・・・ 」
「 ああ イジワルさんなんだねえ ・・・ それじゃ・・・ 」
ジョーの唇は白く滑らかな肢体のあちこちを 彷徨いはじめた。
「 きゃ ・・・ うふん〜〜 や・・・ もう〜〜〜 」
「 ・・・ あっは ・・・ ♪ あ〜〜 なんてあったかいんだ〜〜〜 」
「 きゃん〜〜 ヤだァ〜〜 もう〜 このイタズラ坊やがあ〜〜 」
「 ふふ ・・・ お? また熱くなってきたのかい? 」
「 ま〜あ ・・・ 熱くしたヒトはだあれ。 」
「 うふふ ・・・ きみがこ〜んなに魅惑的だから さ きみのせいだよ 」
「 あ ヤだ そこ ・・・ きゃん ♪ 」
「 ・・・ まだ身体 熱いんだ〜〜 ねえ 冷ませてくれる ? 」
「 ・・・ え ・・・? 」
「 な ・・・ いいだろ ・・・ うふふ 」
ジョーは 腕の中の白い身体にくちびるを そちこちに散らばせるのだった。
そして 彼自身もどんどん熱くなり ― たちまち限界にまで昇りつめた。
「 ・・・ あ 〜 きみと いっしょ ・・・ が いい ・・・ ! 」
「 きゃん! ああ そうよ そうよね いつも いっしょ ・・・ ! 」
「 ・・・ くゥ ・・・ 」
「 ・・・ ああ ああ もう ・・・ 」
二人はイッキに昇りつめた。 見えるのは 愛しいヒト だけ ・・・!
― その夜 星が流れた。
季節の影響もあるだろう。 深夜の空を一際明るく染め上げた星に 気が付いたヒトは
おそらくほとんどいない。
その星々は静寂という音楽を引き据え 大きく夜空を横切り西へと落ちていった ・・・
「 わ〜〜 ながれ星 だあ 〜〜 ! 写真 〜〜 」
国道脇で信号待ちをしていた青年が めざとく 見つけてた。
「 すげ・・・ お〜っと ・・・・? ああ あった あった〜〜〜 行け!! 」
彼はズボンのポケットからスマホを取り出し ぱしゃぱしゃ取り捲った。
「 ふうん ・・・ 冬の流れ星ってば なんか一種すげえ〜なあ ・・・」
日頃は文学的な感性とは程遠い現代青年でも たまにはそんな感想を抱くのかもしれない。
「 ・・・ ふ〜〜ん ・・・ カノジョに自慢しよ〜 あ〜〜〜 ねむい〜〜 」
ぼわぼわ欠伸をすると 彼はやおらアクセルを踏んだ。
多分 一眠りすればきれいさっぱり忘れてしまうに違いない。
そんなわけで その夜の流れ星はほとんど無視をされてしまったらしい。
もっとも それでよかったのだろうけれど ・・・
・・・ !? 眩しい ・・・!
ジョーは一瞬 閃光に包まれ身体全体が宙に投げ出された、と感じた。
「 ? な なんだ??? 」
たった今まで 恋人と暖かい寝床にしあわせ〜〜〜な気分で収まってたはず だ。
イワンに悪かったかなあ ・・・
あら いいのよ。 この頃 彼はねえ ジェロニモと一緒なの。
へえ ・・?? 彼 子守が上手なのかなあ?
なんでもねえ ・・・ 精霊との会話 にジョイントさせて貰うのですって
ふう〜〜ん ・・・ 超能力ベビー、 霊界デビューってことか
・・・ わからないけど ・・・ でも いいじゃない?
こうやって週末とか二人でゆっくりできるんですもの・・・
ま そうだけどね♪
― 最近 ジョーはほとんどの夜、彼女の部屋で過しているのであるが ・・・
その夜、 その事態が発生した。
敵襲か!? と即座に身構えたが ― どうも勝手がちがう。
「 !? ・・・ なにが どうなっているんだ? 」
慎重に周囲を探った。
手脚、いや身体全体、少々ショックは感じたが 痛覚はどこの異常も伝えてきてはいない。
どうやら ・・・ メカ部分を含め損傷はない、と判断できた。
視覚、 聴覚を最大レンジで展開してみる。 当面の <敵> は存在しなかった。
手の下に 植物の存在を確認した。 いわゆる 草 であろう。
「 ふ〜ん ・・・ え?! な なんだ?? ここは ・・・・!
だって ぼくは。 岬のあの家で ・・・ フランの部屋で ・・・ だよなあ??
え? ・・・ 防護服、 着ているのか ・・・ ! 」
・・・ まあ 最後に記憶している < 自分 > は 衣類を纏っていなかったはず、なので
ジョーは少なからずほっとしたのではあるが ・・・
「 ふん? 空気 は普通だな。 潮の香りはしない。 ということは ― 研究所の近辺・・・
ではない、ということか。 」
ゆっくりと身体を起こす。 とりあえず運動機能に損傷はない ― らしい。
・・・・ ええええ?? な なんなんだ〜〜〜〜 ここは???
サイボーグ009 の目の前には。 緑豊かな森に囲まれた風景が穏やかに広がっていた。
「 ・・・ どこだ? ・・・ BGの実験場か? ・・・ いや それらしい建造物は見当らないぞ?
それどころか 普通の民家もない?? ここは ・・・ 深い森の奥 ・・・ なのか? 」
彼はじりじりと移動し始めた。 陰になるものを探し木から木へ ・・・ 素早く移動する。
上空から直視されない用心だったのだが ― その必要はなさそうだった。
「 ? ・・・ 空も ・・・ なにも、いや人工物は なにも飛んでいないし。
レーダー網 も ・・・ なさそうだぞ? だいたいメカニカル・ノイズが ― ない??? 」
009の視覚・聴覚も 常人よりも遥かに優れているので、一通りの探索は可能だ。
「 ・・・ 聞こえるのは 鳥の声と風にゆれる木立の葉擦れの音・・・
あとは ・・・ これは水音か? 池か湖でもあるのかな。 」
009は 足音もさせず、木の枝ひとつ揺らすことなく森の中を進んでゆく。
すこし開けた場所にやってきた。 ぱあ〜〜っと派手やかな色彩が目に入ってきた。
「 うん? ・・・ ああ 花か。 日当たりがいいから沢山咲いているんだな。
綺麗だなあ ・・・ なんの花なんだろう 」
木々の間をぬってゆく小路を辿りつつ 彼は足元にひろがってきた花々に目をやった。
「 あれ ・・・ タンポポとかチューリップ・・・ともちがうなあ ・・・
ぼくが知らない品種なのかな ・・・ あは ぼく、花の種類はあんまし知らないけど 〜 」
ジョーが 花やら庭弄りに興味をもつようになったのは 彼女と一つ屋根の下に暮らすようになってからだ。
この特殊な身体に変わってからは勿論、それ以前の少年時代も 園芸に親しむ などという
余裕はなかった。 時間的にも そして 精神的にも。
そんな彼に 最初 彼女は少なからず呆れていた。
「 あは ・・・ ぼく、百合と薔薇とタンポポと ・・・ 朝顔 くらいしか知らないんだ。 」
「 え ・・・? 本当? 」
「 うん。 施設に庭・・・なんてなかったから ・・・ 百合と薔薇は教会には付き物だから。 」
「 そ そう ・・・ ね? それなら これから楽しみましょうよ?
わたしもね、ず〜っとアパルトマン暮らしで ・・・ お庭に花壇って憧れていたの。 」
「 あ そ そうなんだ? 」
「 ええ。 だから ね♪ ここのお庭をお花でい〜〜っぱいにしたいの。 手伝ってくれる、ジョー。」
「 うん! 勿論〜〜 」
・・・以来、彼は嬉々としてカノジョの庭弄りの相手 ・・・というか下働きを務めている。
お蔭で 少しは草花の名前も覚えた はずなのだが。
「 これでも随分、覚えたつもり、なんだけど・・・ 水仙 ・・・でもないし。
へえ ・・・ 珍しい花なのかも ・・・ 」
彼は足をとめて一本の花をしげしげと見詰めた。
・・・ に ・・・ ! 花が 笑った。 いや 花に顔が あったのだ。
「 !? な なんだ !?? 」
ジョーは一瞬 身構えてしまったが、すぐに苦笑して姿勢を戻した。
「 おいおい ・・・ しっかりしろ ジョー? お前ってヤツはそんなにビビリだったのかい? 」
自身を揶揄しつつ、彼はもう一回じ〜〜っと足元の花を見た。
見間違い ではなかった。
「 ・・・! これ は ・・・! 」
― そう ・・・ とりどりに咲き乱れる極彩色の花々は 全て顔をもっていた。
「 これ は ・・・ ツクリモノ ・・・ か? 」
透視こそできないが 常人よりはるかに優れた < 視覚 > を最大レンジまでパワー・アップし
< 顔をもつ花 > を観察したが ・・・・
「 ・・・ ただの 普通の花 ・・・ にしかみえない。 どこにもメカニズムの痕跡は ないぞ?
・・・ってことは ・・! この世界では花は皆 顔をもっている、ということなのか?? 」
テーマ・パークのツクリモノ・・・じゃあないんだぞ??
いや 待てよ? 花が ・・・ こう・・・ってことは ・・・!
彼は今まで通ってきた森を 仔細に観察し始めた。
「 ・・・ !! 花だけ じゃない ・・・ のか?!? 」
すぐに発見したが 木、老木の幹にも そして苔むした岩にも 顔 があった。
彼らは一様に ジョーの、 つまり この侵入者のことを注視していたのだ。
その森で すべての植物が彼をみつめていた。
「 ・・・ くそ ・・・ これは一種の監視システム ・・・ なのか?? 」
背筋に冷たいものを感じつつ ジョーは何気ない風を装いつつ移動した。
ともかく この森から遠ざからねばならない。
― カサ ・・・! 前方の草むらが揺れた。
「 !? ・・・ あ ああ 動物・・・ 野ウサギ ・・・ か? 」
草むらの中に 茶色の耳がこちらを向いている。 それの一組や二組どころではない。
「 ふうん ・・・ ウサギの森、なのかな。 お ・・・? 」
ガサガサ ・・・ 横の藪にも 青く光る目が見えた。
「 ・・・あ。 これは ・・・ 狐 か? いや 狸 かな・・・ 動物が生息できる環境なんだな。
いや! 待てよ。 さっきの花の件もあるんだ。 アレはもしかして・・・・
そうさ やはり監視ロボット ・・・ なのか!? 」
彼はゆっくり歩いてゆく。 動物たちが寄ってくる気配はどんどん増してきた。
「 まさか攻撃してくる のか? ウサギ 狐 ・・・ リス か?・・・ 小型のものばかりだが。
いや わからないぞ。 油断するな 009 ・・・ 」
しかし 一向に彼らは攻撃してこない。 ただ ただ 興味津々でジョーのことを見つめている。
「 ? なんなんだ? 監視のみ、なのか? ― よ〜し ・・・ 」
突然 彼はぴたり、と足を止めた。
「 ウサギやらリスが沢山いるなあ〜〜 可愛い動物君たち? 」
わざと声を上げてから ・・・ さっと動物たちの方に向き直り手を伸ばしてみた。
ザザザ ッ !!! ガサガサ ッ ・・・! ゴソゴソ ッ ・・・
彼らの方が大慌てで逃げていった。
「 ?? なんなんだ? 監視のみ、のロボットなのか??
・・・ うん? 水音がする! 川 か 泉でもあるのかもしれないな。 」
ジョーは どんどん脚を早めていった。
サワサワ ・・・・ 気持ちの良い風が水面を撫でてゆく。
森の中にみつけたのは あまり広くはない池だった。
ジョーは周辺を注意深く監視してから ゆっくりと池に近づいた。
倒れこんでいる古木などはなく、 周囲からの土砂の流入も見当らない。
静かに風に揺れている水は 清澄でかなり底の方まで見ることができた。
すい ・・・っと水中を横切る小魚の陰もいくつか見受けられる。
「 ・・・ ふうん ・・・? 周囲の大きさのわりに水深は深いらしいな。
魚や昆虫がいるってことは ・・・ 即効性の有害物質ではない証拠だよ。 」
彼は池の端にゆくと そっと水の指を浸してみる。
「 ・・・ うん ・・・ < 普通の水 > だろう ・・・恐らく。
ここはこの森に住む小動物たちのオアシスになっているのだろうなあ。
・・・ ふうん・・・気持ちいいな。 」
緊張した頬に 彼は水に浸した手を当てた。
「 ・・・ よし。 有害物質、 なし。 恐らく湧き水、だろう。
― 飲んでみるか ちょっと冒険だが ・・・ 」
ジョーは ほんの少し躊躇ったが すぐに池の端に片膝をつき、両手で水を少量掬った。
「 こりゃ。 ナニをする? 」
「 へ??? 」
なにかヘンな声が池の中から聞こえてきた。
「 !? だ 誰だ ?? 」
ジョーは ぱっと身を引くとスーパーガンを抜き 油断なく構えた。
「 どこにいるっ!? 出てこい っ 」
「 ・・・ なんだなあ〜〜 いきなりやって来たのはソッチじゃね〜かよ〜〜 」
「 ともかく! 姿を現せっ 」
「 ・・・ はいはい わかったよ。 じゃあ 兄ちゃん、アンタもその物騒なモン、しまってくれよ〜 」
「 お前が攻撃してこない限り ぼくは撃たない。 」
「 へいへい 専守防衛ってことですかね。 ちょいと待ってくれよ〜〜 今 上がるから・・・ 」
ヘンな声の主は ぶつぶつ言いつつ、どうも近寄ってきているらしい。
な なんなんだ? 確かに声が聞こえた ・・・ よな?
テレパシーとか 脳波通信の類 ・・・ じゃない ぞ?
それにしてもどこに居るんだ ? さっきの声の主は !
ジョーはスーパーガンを下ろしはしたが 周囲の状況をより精密に索敵し続ける。
「 ・・・ 普通の 池 だよなあ? 水の中に基地や小型潜水艇が潜んでいる様子もない。
周囲の木や あっちの崖にも隠しカメラやマイクの存在は認められないぞ? 」
― やがて。 平坦だった池の表面が ゆらゆら・・・ 少し揺れた。
「 お!? ・・・ やはり この中 ・・・か!? 」
009は緊張して 水面を監視する。
ぽっちゃん ぴったん ばっちゃん。 暢気な水音がした と思ったら。
「 やあ〜〜〜 ここ ここ。 こっちだってばよ、 兄ちゃん 」
池の真ん中に浮いた睡蓮の葉の上に ブチのカエルが一匹 ・・・ よいしょ・・・っと乗ってきた。
「 !? ・・・ か カエル !?? 」
「 そ。 俺様は この池に住むカエル王子 さ。 」
「 かえるおうじ??? しかし! お前〜〜 人間の言葉を喋っているじゃないか!? 」
「 あは。 なんだ〜〜 兄ちゃん、知らないのかよ〜〜 」
「 な なんだ?! 」
「 俺様はァ この国のォ 王子様 だったわけ。 ・・・で もって悪い魔法使い に抵抗したために
こ〜〜んな醜い姿に変えられてしまったのさ。 」
カエルは えっへん! と 葉っぱの上で胸を張った。
「 俺様はァ 正義のヒーローだからな〜〜 うん。 」
ジョーはブチのカエルをまじまじと見詰めてしまった。
せ 正義の ひーろー ・・・だって ??
「 ・・・ こ ここは どこなんだ?? テーマ・パークのアトラクションなのか? 」
「 はあ? 兄ちゃん 〜〜 アンタ、 いまじね〜しょん、貧困だねえ ・・・
だからさァ ココは お伽の国 なわけよ。 」
「 お おとぎのくに ?? 」
ジョーは もういわゆる ≪ 目がテン ≫ 状態 ・・・ ぺらぺら喋るカエルを呆然と眺めている。
「 だいたい〜〜 なんで兄ちゃんが来るんだ?
こういうシチュエーションに外界からやってくるのは 純真なる乙女 に決まってるだろ〜が!」
「 じゅんしんなるおとめ? 」
「 美女のキス で魔法は解ける。 それがお約束だぜェ〜〜〜 」
「 び 美女の キス ?? 」
「 いちいちリピートするなよ〜〜〜 ウザ ・・・ 」
「 うざ?? そ それがカエルのセリフか? 」
「 だ〜〜から。 ココに来るのは 絶世の美女 で。 俺様の気高い行為に感激して
あつ〜〜〜い ちう をする・・・ってのが ストーリーなわけ。 」
「 ・・・ キスをしてもらわないと人間に戻れないのかい? 」
「 そうなんだ〜〜 ソレがあの魔法使いの悪辣なトコでさ〜〜
ヤツはこの国の国民を全員! 動物やら花や木に変えてしまい 最後に王子の俺様を
この姿にしたってわけよ。 キスの呪つき、でさ。 」
「 はあ ・・・・・ 」
「 俺様としては! 一日も早く人間の、王子の姿に戻ってワルい魔法使いをやっつけ!
国民たちを元の姿にもどし!この国を解放したい〜〜〜 ケロケロケロ〜〜 」
カエル王子は 葉っぱの上で大演説をブッっている。
・・・ なんか ・・・ コイツにはコイツなりの < 正義 > があるの かも なあ
ちょっと気の毒 かも ・・・
ぼく達も ・・・ あまり報われない < 正義のひーろー > だもんなあ・・・
ジョーは少しばかりブチのカエルに親近感を持った のかもしれない。
「 あ あの さ? 人間のキス が呪を解く鍵、 なのかい。 」
「 だ〜〜から! さっきから何回も言ってるだろ! 」
「 ・・・ あ じゃ じゃあ。 するよ ・・・ キス。 」
「 ― は ??? 」
「 だから その ・・・ ぼく が。 」
「 はああ〜〜〜〜〜 ????? 」
「 それで呪が解けるなら。 きみ達が幸せになれるのなら。 い いいよ ぼく! 」
「 お おい〜〜〜 お前〜〜 早まるなああ〜〜〜
俺様はあ〜〜 ソッチの趣味はないんだ〜〜 キスったって ・・・ 」
ジョーは 思い詰めた表情で ざぶざぶと池に入るとブチのカエルをむんず、と掴んだ。
「 ひ ひえ〜〜〜 うわ〜〜〜 」
「 今。 呪を解いてやるよ。 ( フラン〜〜〜 ごめん! ) 」
「 うわ〜〜〜 やめろォ〜〜〜 」
ジョーは問答無用! と 引っつかんだカエルに 唇を寄せ ・・・・
「 おまち〜〜〜〜〜〜 待つんだよ〜〜〜〜〜 」
どんどん どろろ ・・・・ 不気味な声とともに池の水がざざざ〜〜〜っと揺れだした。
「 !? おわ?? な なんなんだ ?? 」
「 あ! ヤベ〜〜〜 超やべ〜〜〜 アイツが気付きやがったァ〜〜〜 」
ジョーの手の中でぶちのカエルが けろけろろ〜〜と大騒ぎである。
「 ・・・ アイツ!? きみの仲間なのか? やはりカエルなのか? 」
「 え あ い いや ・・・ カエルよりもっと始末が悪い〜〜〜 ぜ〜〜〜 」
「 カエルじゃないってことは ― あ もしかしたら〜〜 」
ふっふっふ〜〜〜〜 お前は一体誰なんだい?
ぞわぞわぞわあ 〜〜〜 地の底から響いてくるみたいな生暖かい風が吹いてきた。
「 ヤッバ・・・! なあ 俺〜〜 ちょいと急用〜〜 思い出しちまったんだ!
あ 俺〜〜 ここでこのゲームから ぬ〜〜けるっ 」
「 だめだよっ ! 」
ジョーは思わず手につかんでいた カエルをぎっちり握りしめた。
「 おわっ? うぐぐぐぐ 〜〜〜 お〜〜い 俺様を握り殺す気かあ〜〜〜」
「 あ!? す すまん〜〜 つい ・・・ 」
「 はへ〜〜〜 ・・・ ああ やっと息が出来る・・・・ ふぁ〜〜〜 」
ふっふっふ ・・・ お前 魔法を本当に解く方法 をしらないね〜〜
不気味な声が 池の中から嘲笑う。
「 !? 魔法を解く? 動物やら植物を もとの人々の手に戻す方法ってこと ?
聞いたぞ! お前は ・・・ もしかして 悪い魔法使いかっ!? 」
「 ちがう ちがう。 ワタシはカエルの女王さ。 ほほほ ・・・ だけど ねえ ・・・
そのお喋りカエルのいうことを本気にしてはだめよ。 」
「 だってお前もカエルなんだろう? なにを言う!? さ! 早く! カエル王子〜〜
さあ キスしてやる〜〜 」
ジョーは 再び例のぶちのカエルをきゅっと捕まえた。
「 え。 あ あのゥ〜〜〜〜 うわ うわ〜〜 やめてくれえ〜〜 」
「 お止め。 そんな下っ端カエルにキスしても無駄さ。 」
「 ふ ふん! その手は喰わないぞ! 」
「 無駄だって言っただろう? カエルにキスするのは 絶世の美女 って決まってるのよ。
それ以外のヤツが それも野郎なんかがキスしたって 無意味。 」
「 え ― そ そうなのか? 」
「 そうよ。 うふふふふ 〜〜〜 そしてね、 旅の青年がキスするのは〜〜〜〜
美貌の囚われの姫君 に決まってるじゃないのォ〜〜〜 」
「 えええ??? 」
どんどんどろろ 〜〜〜 ざっばあ〜〜〜〜 ・・・! 池の水が急に盛り上がった。
そして ―
「 ほほほほ ・・・・ ほ〜〜っほっほっほ・・・
以前はこの国の そして 今はカエルの女王〜〜 たま〜ら とはこのワタシ。 」
どどど〜〜〜ん ・・・ ! 池の中央には でっかい紫色のカエルが 現れた。
「 うわあ???? また カエルかよ ?? 」
「 うふふふふ ・・・ さあ〜〜 外からきた若者よ? りりしい若者よ♪
どうぞ ワタシにキス しておくれ〜〜〜 」
「 ・・・ え。 」
ジョーは 掴んでいたぶちのカエルを ぼとり、と落とし じりじりと後退りを始めた。
「 さあ さあ どうしたの? お前の甘ァ〜いキスを おくれ〜〜
お前のキスで 大勢の命が助かるのだよ〜〜 さあ 正義のヒーローさん〜〜 」
ずい ・・・ と 紫カエルはジョーに迫ってきた。
「 ・・・ あ あ あのぅ〜〜〜〜 」
― 009。 絶対絶命の ぴんち!
・・・ う ・・・ う〜〜ん ・・・・
フランソワーズは ぼんやりと目を開けた。
「 ・・・ ? こ ここ ・・・ どこ ・・・ え ・・・ つめたい ・・・? 」
どうやら 水辺にいる ― らしい。 指先がなにかしめったものに触れている。
「 え ・・・ なに これ。 ・・・ 砂?! え〜〜〜 うそ? 」
そろそろと身体を動かしてみる。 痛むところはなく、手も脚もどこも自由に動く。
指先は 現在この身体全体は濡れた砂の上に突っ伏して倒れているのだ、 ということを
彼女の人工頭脳に伝達していた。
「 ・・・ 家の前の砂浜 ・・・ じゃあないわね。 音がちがうわ、波の音が ・・・ 」
003はその特殊能力を最大レンジで展開し 倒れたまま周囲の状況の把握に務める。
「 ん 〜〜〜 敵襲 なし。 それどころか 人影 ナシ。
・・・ 人工の建造物 ナシ。 それどころか 動くモノ一切 ナシ。
ここは ・・・ 洞窟の中 ? 一応浸食してきたと察せられる海 あり。 」
これなら起き上がっても大丈夫 ・・・と 彼女はそろそろと身を起こし始めた。
うっそ 〜〜〜〜 ここ どこ ???
彼女は波打ち際に 倒れていたのだった。
「 ・・・ やだっ ・・・ なんでこんな所にいるの? 」
足の先はすでに波が寄せてきている。 冗談じゃない、と彼女はがばっと起き上がった。
「 あ ・・・ ら。 わたし 防護服着てる ・・・? だって さっき ・・・ 」
ふっと頬を染め フランソワーズは彼女を包む赤い特殊な服を引っ張ってみた。
・・・ そう ついさっきまで。 恋人の腕の中、 で なにも纏っていなかったのだもの。
「 ジョー ・・・? は いない のね。 苛視範囲、可聴範囲に009の反応 なし。
・・・ 脳波通信は ― 送受信不可能 か。 ここは いったい ・・・ 」
波打ち際から 浜に移動し彼女はあらためて周囲を見回した。
海は海でも 暗い海だ。 ぱあ〜〜っと開けた大海原ではない。
夜の帳か ・・・と思われたモノは厚い岩盤の天井だった。
「 ・・・ ふうん ・・・ どうやら地底 か 洞窟の中に閉じ込められているってことなのね。 」
人工の建造物は全く見当らず − 同時に 外敵 とおぼしき存在も ない。
「 いったい ここは ― なんなの?? 」
― カサリ 後ろで 衣擦れの音がした。
「 !? だ だれ!? 」
「 ・・・・・・・・ 」
長い髪で 裾を引いた ― キモノに見えなくもない服装の女性が いた。
「 !? あ アナタ ・・・ 誰なの? ここは どこ!? 」
「 ・・・ ワタシは アナタの ― 母です。 」
きゅ ・・・ その女性は フランソワーズを抱き締めた。
「 え〜〜〜〜〜 ?! ウソ〜〜〜 冗談は止めてくださいっ 」
フランソワーズは 渾身の力を込めて自分を抱きすくめている腕から 逃れた。
「 ・・・ ナゼそんなことを言うの? ワタシはアナタの母です。 さあ いらっしゃい 」
「 いいえっ! わたしの母は! もうずっと前に亡くなりましたわ。
だいたい あなたね? わたしの母は金髪に青い瞳の フランス人よ! 」
「 ふらんす人 ? なに それ ・・・ 」
「 アナタ ・・・ 黒い髪に黒い瞳 ・・・ それは キモノ ね? じゃあ 日本人なの? 」
「 にほん人 ? なに それ・・・ ああ こっちへおいで わたしの ジョー 」
「 ・・・ ジョー ?? 」
ズサ ・・・っ! 003は 砂を蹴って飛び退いた。
目の前の人物は ― 姿 形は人間なのだが ども見てもふつ〜のヒト ではない。
!? アンドロイド? もしかして起爆装置でも装着してるのかしら?
精密度を最大にして < 彼女 > を観察した。
「 ・・・ うそ ・・・? なにも ・・・ ない? え ・・・ じゃあ どうしてこのヒト、生きてるの?」
彼女はじりじりと その女性から離れる。
「 どこへ行くの。 ずっと待っていたのですよ ・・・ さあ いらっしゃい、ジョー。 」
「 ! あの! わたし。 ジョー じゃありません。 よ〜〜く見てください。
それに アナタはわたしの母親でもありません。 いい加減なこと、言わないでください。 」
「 ・・・ ジョー じゃ ない ・・・? いいえ そんなはず、ないわ。
ここは ・・・ ジョーの夢。 ジョーしかやってくることはできないはずです。 」
「 夢 ・・・? え ・・・ あの もしかして ・・・ ここは夢の世界 なのですか? 」
「 ゆめ ・・・? わからない、なに ソレ ・・・ 」
女性の視線は ぼんやりと宙を彷徨っている。
「 ねえ! アナタ。 ほら わたしを見てくださいな。 しっかりして!
アナタの息子 の ジョー じゃないでしょう? 」
「 ・・・ え ・・・? ― あ あら。 え〜〜〜〜〜〜 ??? 」
「 ・・・ え〜〜 ・・・ はわたしが言いたいですわ。 」
「 あ あ あなた ・・・ 女の子じゃない?? ワタシのジョーは息子なのに〜〜 」
「 そうでしょうとも。 だからさっきから言ってるでしょ。 」
「 だって だって 〜〜〜 ここは 惑星009 なのです。
009の ワタシの息子の夢の国 なのです。 ― なんでアナタが来たのですか? 」
「 そんなことわたしが聞きたいです! 」
「 でも でも ああ〜〜 ワタシのジョーはどこに行ってしまったのかしら・・・ 」
ワタシのジョー ・・・ですって???
だいたい このヒト〜〜 本当にジョーのお母様なわけ??
そんなコト 聞いてないわよ〜〜〜
ぼくは 母のことは顔も覚えていないんだ って言ってたわよ
それに〜〜 なんだってわたしがこんなトコに飛ばされてきたわけ?
― あ。 もしかして ・・・ 昨夜 ・・・
ふと思い当たるフシがあり、 フランソワーズは一人で耳の付け根まで赤くなった。
「 ・・・ あの。 わたし。 彼と一緒、だったので ・・・ その ・・・ 昨夜 ・・・ 」
「 まあ〜〜〜 それじゃ アナタ ・・・ ワタシのジョーのカノジョさん? 」
「 ・・・ え ・・・ あ 〜〜 カノジョってか そのゥ〜〜 」
フランソワーズは一瞬言い澱んだが ― きりっと顔をあげるとはっきり答えた。
「 わたし。 ジョーと一緒に住んでます。 」
「 まあ まあ まあ ・・・ そうなの? ワタシの息子のお嫁さんなのね? 」
「 お およめさん ?? 」
「 まあ まあ まあ ・・・ そうなの ・・・ こんな可愛いお嬢さんとねえ ・・・
で あの子、 元気ですかしら。 」
「 え ええ 元気は 元気ですけど ・・・ 」
「 まあ まあ まあ そうなのね〜〜 ワタシの息子をどうぞヨロシクね。
そうなのね〜〜 それで 入れ違ってしまったのね〜〜 」
「 入れ違い? 」
「 まあ まあ まあ そうなのよ ・・・ ここはあのコの夢の国なの。
間違えてアナタを呼んでしまったわ ・・・ あのコは あなたの夢の国 にいます。 」
「 ・・・ え〜と ・・・? 」
これで私は姿を消すことができるわ ・・・
白いキモノの女性は ほ・・っと呟いた。
「 ええ? なぜですか。 」
「 お嫁さんがいるのなら。 ジョーはもう満たされない想いを抱いて彷徨う必要はないからです。
彼がシアワセになったのなら ― 私は ・・・ やっと消えることが できます。 」
「 ・・・ 消える? あ ? なんか姿が ・・・ 薄くなってきてません? 」
「 さようなら ・・・ ワタシの息子をお願いします ・・・ シアワセに ・・・ 」
「 ちょ ちょっと待って〜〜 わたしはどうなるの?? 」
「 ワタシのジョーのことを想って。 その念がアナタを彼の元に送ります。 さようなら ・・・ 」
「 あ ・・・ 消えちゃった ・・・ ありがとう〜〜〜 」
<ワタシのジョー> を 連呼するのがどうも気に障ったけれど ― 悪いヒトじゃない。
フランソワーズは 暗い海原を見つつ しゅん・・・としていた。
「 ・・・ おかあさま ・・・って。 呼んであげればよかった ・・・ ありがとうございます ・・・
は! それどころじゃないのよね! さあ〜〜 ゆくわよっ! 」
― ジョー −−−−−−−−− ・・・・・!
フランソワーズ、 いや 003の姿は忽然と宙に消えた。
シュワッ ・・・! 池の上空が突然 光った。
それはまさにピン・スポ ( ピンポイントで照らすスポット・ライト ) の如く輝き、
池での情景をばっちり ・ くっきり ・ はっきり! 照らし出した。
フランソワーズは上空から ばっちり光景を見ることが出来た。
「 あ ! あれは防護服! ジョーだわ! ・・・ え ???? 」
・・・ 池の中央のバカでかい睡蓮の葉っぱの上で 青年と紫色のカエルが
今 まさに〜〜 唇をあわせよう としていた。
「 !? うわあ〜〜 な なんだァ〜〜〜 」
突然 目の前がぱあ〜〜っと明るくなり ジョーはさっと身構えた。
「 な なにごとです!? ケロケロ〜〜 」
紫色の大カエルも 一瞬身を引き、池に戻ろうとした。
そのキス ! 待ったァ 〜〜〜〜〜 !!
「「 え えええええ ??? 」」
バッシャ −−−−− ン ・・・・! 池が盛大に波打つ。
次の瞬間 ― 赤い特殊な服に身を包み 黄色いマフラーを華麗になびかせ。
亜麻色の髪の美女が睡蓮の葉の上に すっく! と立っていた。
「 失礼いたします。 サイボーグ 003 です。 」
美女は 優雅にレヴェランス ( お辞儀 ) をした。
「 行方不明になっておりました同僚の 009を救出に参りました。
ジョー ・・・ さあ 帰りましょう。 さんざん探したのよ? 」
彼女は満面の笑みで < 同僚の009 > に手を差し伸べた。
「 ・・・ う ・・・ そ ・・・? なんだってきみが ・・・ ココいるんだ?
ここは ・・・ぼくの夢の国 のはず ・・・ 」
「 ジョー。 ココはね、 本当はわたしの夢の国 なの。
わたし達 入れ違ってしまったのよ。 ・・・ あの ・・・ ほら ・・・ 昨夜 ・・・
そのう〜〜 一緒に いた でしょ? 」
「 え? あ ・・・ ああ ・・・・ 」
「 一緒に いたァ〜〜〜 だとォ〜〜〜!??? 」
ケロケロケロ〜〜〜〜 紫色のでっかいカエルが ぬぼ〜〜と現れた。
「 きゃ〜〜〜〜〜!? な なに コレ〜〜〜 キモ 〜〜〜〜 」
「 あ ・・・ あの。フラン、 このヒト・・・ってか このカエルさんは 」
「 カエル さん ですって?? このキモ〜〜 な物体が? 」
「 うぬ! わらわに向かって キモ〜〜 とは何事じゃ! 」
「 きゃあ〜〜 カエルが口 きいた〜〜 キモィ〜〜〜 」
フランソワーズはジョーの後ろに隠れてしまった。
「 わたし ・・・ ぬめぬめしたものってダメなのォ〜〜 」
「 ・・・ フラン ・・・ 」
紫カエルは に〜んまり笑い再びジョーの前に立った。
「 わらわは カエルの、そしてこの国の女王 ・ たま〜ら であるぞ〜 ケロケロ〜 」
「 ・・・ た ま〜ら ?? 」
「 さあ そこな正義のひーろー よ。 わらわとあつ〜〜い口付けを交わし
哀れな人民どもを救っておくれ。 」
「 う ・・・ その ・・・ ほ 本当なんだろうな? 」
「 わらわの言葉を疑うのか? わらわとそなたが一緒になってこの国を統べるのじゃ。
ほ〜っほっほっほっ ・・・ 優秀な子孫が沢山 生まれることでしょう〜 」
「 ・・・・・・・ 」
ジョーは 忍! の一文字、という顔で ― 紫カエルと向き合った。
と ともかく! 魔法を解くことが先決だ!
・・・ こ これは 正義のヒーロー のお仕事 なんだ〜〜
「 ジョー!? 本気なの?? 」
「 ごめん フラン! でも これがぼくの使命なんだ。 ゆ 許してくれ ・・・! 」
ジョーは悲壮な声で叫ぶと に〜んまりしている紫色のカエルにむかって身を屈めた。
「 ほ〜っほっほっほ ・・・ わたくしの勝ちね! さあ 〜〜〜 」
じょ じょ〜〜だんじゃあないわよッ ・・・!
― ドン ・・・!
正義のヒーローがでかいカエルにキスしようとした瞬間 ― 彼の身体は吹っ飛んだ。
「 −− へ ??? 」
「 ・・・・・ ジョー ! あなたの代わりに わ わたし が −−− ! 」
ちゅ。 美女とカエルは キス をした。
「 な!? 」
「 ・・・ きゃ〜〜〜〜〜 キモ 〜〜〜〜 」
「 う そ ・・・ ! 」
「 ケロケロ ?? マジかよ〜〜〜 」
様々な悲鳴が飛び交う中 ― 辺りは白い煙で覆われた。
うわあ 〜〜〜〜〜〜 どんどん どろろろ 〜〜〜〜〜
ざっば 〜〜〜〜 ・・・・ 池の中央からちょいと太めの竜が現れた。
「 ?! な なんだ〜〜 今度は竜 ??? 003、一緒に撃つんだ! 」
「 了解 009! 」
サイボーグ戦士は 並んでスーパーガンを構えた。
「 お おいおい 〜〜 待て! 待つんだ〜〜〜 」
竜が大慌てでわさわさ手を振っている。
「 ワシは悪い竜 じゃないぞ〜〜〜〜 ワシもソイツに封じられておったのじゃ。 」
「 ソイツ ? 」
「 左様。 その 紫カエルのたま〜ら じゃ。 ソイツこそが悪い魔法使いなのだよ。 」
「 えええ??? 」
ふにゃあ 〜〜〜〜 ・・・・ 紫のでっかいカエルは池の真ん中でぷかぷか浮いていた。
「 ・・・ し 死んでる? 」
「 え !? だって ついさっき わたし 〜〜 あ〜〜〜 ! 」
ゴシゴシゴシ 〜〜〜 はた! と気が付いてフランソワーズは必死で唇を拭っている。
「 左様。 ソイツは正義の美女とキスをして ショック死したのだ。 」
― たま〜ら は 百合族ではなかったらしい ・・・
「 たま〜らが死なない限り 呪は解けなかったのじゃ。 ヤツはこの森を魔法で封じ込め
子孫を作り永遠に支配しようと ・・・ 行きずりの < 正義のヒーロー> を狙っとったのじゃ。 」
「 わ 悪いヤツですねえ 〜〜 」
「 あら? ねえ ・・・ ほら。 魔法が解けたのじゃない? 」
「 え? 」
フランソワーズは ジョーに森の様子を示した。
「 あ ・・・ 本当だ。 あのヒトたち ・・・ この国の人達なのかな 」
「 そうみたいね。 よかったわ〜〜 」
森には 人々がほっとした様子で語りあっていた。
おそらく もともとこの付近に住んでいた人達なのだろう。
「 ・・・ は ・・・ ああ 人間に戻った ・・・ 」
「 ・・・ え ええ。 私は クマ になってました ・・・ 」
「 私なんか タンポポですよ? もう少しでウサギに食べられるところでしたよ 」
「 俺はウサギだったけど ・・・ 狐に追っかけられて さあ ・・・ 」
「「「 ― 人間に戻れてよかった〜〜〜〜 」」」
「 おいおい そなた達。 無事でよかったのう・・・ 」
竜は ― いつの間にか白い長い髭の爺様の姿に戻っていた。
「 あ〜〜 長老〜〜 貴方様もご無事でしたか! 」
「 ああ なんとか な。 悪い魔法使いは滅びていったよ。 」
「 そうですか! え 長老がやっつけてくださったので? 」
「 いやいや ・・・ この二人の 熱い愛 に、たま〜らめは自滅しおったのじゃ。 」
「 ひゅ〜〜 ひゅ〜〜〜♪ お熱いね! お二人さん♪ 」
森の人々はジョーとフランソワーズを囲んで 口々に囃し立ててくれた。
ま ・・・悪意のない祝福、のつもりなのだろう。
「 え ・・・ ァ・・・・ あの〜〜 ぼく達はそんなんじゃ ・・・ 」
「 ジョー !! 」
「 ・・・ って ・・・ 」
フランソワーズはジョーの足を踏んづけると 前に出てにこやかに返礼をした。
「 まあ 皆様 ・・・ ありがとうございます♪ 」
やんやの拍手が起こり 二人は頬を染め ― 幸せそうに寄り添った。
「 さ〜て ・・・ この後 どうしようか。 畑も荒れてしまったし・・・」
「 う〜ん ・・・? あ そうだ。 メルヘン ・ ランド としてやってゆきますか。 」
「 お。 いいねえ〜〜〜 魔法の森のメルヘン♪ ってな〜〜 」
「 ああ そこのお二人さん ? ハネムーンに如何です? 夢の国ですよ〜〜 」
「 あ ・・・ あの。 ぼく達 帰ります。 ね フラン? 」
「 ええ。 わたし達の世界へ。 」
― だって。 ココは夢の国 ・・・ 夢の惑星だもの。
二人はこそ・・・っと呟いた。
そうなのです。 恋人たちには 夢 よりも 現実の方が甘ァ〜〜い のですから。
****** オマケ
「 なんじゃと? 部分改造 ・・・ ? 」
「 はい 博士! 早急にお願いします! 」
「 なにか損傷でもあるのかの? 見たところ・・・ 怪我はないようじゃが・・・ 」
「 外科的損傷はありませんわ。 でも ・・・ 我慢できないんです〜〜 ともかく
一分でも早く お願いします! 」
「 ・・・ お前自身の身体のことだからのう ・・・ ワシには反対をする理由はないが・・・ 」
「 じゃ すぐに! 」
003 は ギルモア博士を緊急医療ブースへと引っ張っていった。
・・・ あんなキモいカエルと ・・・ キスした唇なんて〜〜〜!!
とにかく < 新品 > と換えてもらわなくちゃ
ジョーとキスもできないわ 〜〜〜
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updated : 10,01,2013.
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************ ひと言 *********
・・・・ だから。 めるへん なんですってば♪